経済産業省と東京電力の癒着、天下り先としての保安院などの、地位と高額所得があっても責任意識の薄い多重上層部を不必要に生み出し、
原子力政策の責任の所在を不明にしてきたという、構造的な問題が根本にあり、官僚任せで、根本的な改善に向かっては
なんの意欲も必然性も感じていなかった55年体制下の自民党の責任こそ問われるべきではないかと私は思います。
海部俊樹元総理の手記「政治とカネ」(新潮新書)を読みました。自民党内の非主流派だった三木武夫氏のもとで55年体制下の同党を生きた彼は
昭和の自民党と野党の実態を赤裸々にかいています。
利権にまみれた自民党政治時代を良き時代と懐かしむ風潮の人々にこそぜひ読んでいただき、そのうえで森元総理や伊吹元幹事長、
地元への利益誘導の著しかった古賀誠氏、町村元幹事長などが政権の中枢に帰ってくることを望む方々に、本当にそれでいいのか、
また民主党で小沢グループが主流になったほうがいいとか思っている人にも読んでもらいたい、と切に思います。
少し同書から抜粋させてもらいましょう。興味をもたれましたら、ぜひ購読をお勧めいたします。
例えば、田中角栄的なものについて「田中角栄という政治家は、とにかく金を配るのが好きで、金を渡す理屈を実に上手に見つける人だった。
私も田中氏から直接、海部君、政治は力だよ、力は数、数は金だ、と聞かされたことがある」と書きます。
一方で田中氏の演説の巧みさを讃えながらも、「能力も茶目っ気もある氏だったが、良い方向に活かさずに金権政治に走ってしまった。
自派を大きくするために、金で無理をしすぎた。その金の原資は、道路利権であった。
田中派には、五箇条という縛りがあり、親分が黒と言えば、白でも黒になるという、ギャングもかくやの掟がまかり通っていた。「それが嫌なら出て行け!」
をというわけだ。しかし出ればつぶされるのがわかり切っているから、みんな黙ってしまう。
どこかで聞いたような話ではないだろうか。そう小沢一郎氏のやり方がこれとそっくりなのだ。彼は田中氏のこのような部分だけを踏襲してしまった。」
小沢氏と3度タッグを組んだ経験を持つ海部氏は、彼に対する評価が特に具体的で厳しい。
海部内閣時に幹事長だった小沢氏は、海部氏の言葉を借りれば「辞める必要のない場面で逃げた」という。
「物事がまとまりかけると、自分の存在価値が低くなるから、つぶす。
つぶすためには、横車でもなんでもゴリ押しして、荒れるなら荒れるでよろしい。小沢氏はそんなことを繰り返した。」